インド細密画を読む・2
(ナーラーヤナ)

 
 
 
 ヒンドゥー教の神様には何人もおられて、どういう関係にあるのかわかりにくいきらいがある。もちろん、ヒンドゥー教には、大きく分けてシヴァ派とヴィシュヌ派があるが、この絵は、おそらくヴィシュヌ派の立場から描かれたものかと思われる。
 まず、右上に立たれる、体中に眼が描かれている方は、神々の王、インドラ神である。その下におられる、虎の毛皮を着て、コブラを首に巻いているのは、破壊の神、シヴァ神であろう。左に移って、下側、四つの顔をされて、手にヴェーダを持っているのは、創造神、ブラフマー神であり、その左側に二人並んでいるのは、おそらく、ヴィシュヌの従者、ナンダとスナンダかと思われる。そして、円形のような形をしたものの左上に、蓮を捧げるようにして立っておられるのは、その肌が青色であることより、ヴィシュヌ神であろう。それでは、中央に寝ているのは、誰であろうか? 
 ヒンドゥー教の三神とは、ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァであるのはよく知られている。その三者が礼拝を捧げているのは誰なのか、その関係がよくわからなく、絵を見て始めは少し混乱したが、これはナーラーヤナ(水の上に住む者)と言われる神様で、すべての根源的な神と言われる。別名、マハーヴィシュヌとも呼ばれており、三神の一人である宇宙の維持者、ヴィシュヌとして顕われるのは、この神の完全拡張体であるとされる(ここのあたりは、微妙なところですが)。ちなみに、中央の円形の部分は、原初の水(ガルボーダ)を表わしており、千の頭を持つ神、シェーシャが、ナーラーヤナの寝床となっておられる。左には妻である、女神ラクシュミーが座られ、ナーラーヤナの臍に生えた蓮の上には、サナカなどの四人の聖仙が表わされており、この方たちは、五歳くらいの幼児として描かれて、永遠の禁欲を誓っておられるとされる。左下に乳牛が描かれているのは、ナーラーヤナがクリシュナとして降誕された時、牛たちをとても愛されたからだろう。

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クリシュナ神の物語・「バーガヴァタ・プラーナ」